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静かな設計

ダークパターンとカーム・デザイン——二つの設計倫理

Digital Stillness 編集部 約3分
ダークパターンとカーム・デザイン——二つの設計倫理

ひとつの画面の中に、相反する二つの倫理が同居している。一方は、利用者をできるだけ長く留め、事業者の望む行動へとそっと押し進めようとする設計。もう一方は、利用者の意図を中心に置き、用が済めば静かに身を引こうとする設計。前者を「ダークパターン」、後者を「カーム・デザイン」と呼ぶことができる。本稿では、この二つを並べて比べてみたい。

「ダークパターン」という言葉を広めたのは、英国のデザイナー、ハリー・ブリヌルである。彼は、利用者を意図しない選択へ誘導する欺瞞的な設計を分類し、警鐘を鳴らしてきた。解約ボタンを見つけにくくする、同意のチェックをあらかじめ入れておく、購入を急がせる偽の在庫表示を出す——いずれも、利用者ではなく事業者の指標を最適化するための手口だ。

誘導する設計と、退場する設計

カーム・デザインは、この対極にある。カーム・テクノロジーを整理したアンバー・ケースの原則に立てば、良い道具は利用者の注意を最小限しか要求せず、判断を奪わない。必要な情報は伝えるが、急かさない。目的を達したら、画面は利用者を生活へ返す。誘導するのではなく、退場するのである。

この対比を、いくつかの場面で具体的に見てみよう。退会の手続きを考えると、ダークパターンは経路を長く曲がりくねらせ、引き止めの確認を何度も挟む。カーム・デザインは、登録と同じ手数で退会できるよう設計する。通知についても、前者は既定で多くを鳴らして関与を引き出し、後者は必要なものだけを明示的な許可制にする。

分かれ目は、技術ではなく目的にある

注目すべきは、両者を分けているのが技術的な難易度ではない点だ。解約しやすくすることも、通知を控えめにすることも、技術的には容易である。違いを生むのは、何を成功とみなすかという目的設定だ。短期の関与を最大化する目標を掲げれば設計は前者へ傾き、利用者が満足して離れることを良しとすれば後者へ向かう。

もっとも、事業として収益を上げる必要がある以上、どこまで利用者本位を貫けるかには現実的な制約がある。ここで反論として持ち出されるのが、ある程度の誘導は利用者の利益にもなる、という見方だ。たしかに、有用な機能の存在をさりげなく知らせることと、選択を欺くことのあいだには幅がある。問題は、その線をどこに引き、誰の利益を基準に引くかである。

規制は土台を作るが、静けさは作らない

近年、欧州連合のデジタルサービス法などが、欺瞞的な設計の一部を明確に禁じる方向へ動いている。こうした規制は、最も悪質なダークパターンを抑える土台にはなる。ただし、規制が作れるのは「やってはならないこと」の境界線までだ。穏やかさそのもの——利用者を尊重して静かに退場する設計——は、規制では生まれない。それは事業者が目的をどう定義するかという、自発的な選択に委ねられている。

二つの設計倫理を並べてみると、画面という同じ場所が、まったく異なる思想を映す鏡になりうることがわかる。私たちが日々触れる道具がどちらの倫理に立っているかは、派手な機能ではなく、退場の作法のような地味な部分に、最もよく表れる。

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